戦後の科学・技術
1945
・GHQ、「ウランなど放射性元素の分離」に関する研究を禁止(9月22日)。→理化学研究所、京都帝大、大阪帝大の放射性元素分離装置サイクロトロンは、すべて破壊解体され、海中投棄された(11月24日)。
・GHQ、航空に関する研究と教育を全面禁止(11月18日)。→これに伴い11月29日、東京帝大の航空研究所解散。46年4月に理工学研究所として再出発。58年4月1日理工学研究所廃止、航空研究所復活。
1946
・民主主義科学者防会創立(1月12日)。→6月に機関誌『自然科学』創刊。
・中央気象台に天気相談所開設(2月25日)。
・中央公論社の科学雑誌『自然』創刊(5月)。
・東京通信工業株式会社設立(7月7日)。→58年1月1日にソニーと改称。
・人工甘味料ズルチン販売許可(7月4日)。砂糖の代用品として人気呼ぶが、毒性が強く69年に全面使用禁止。
1947
・八杉龍一が『自然科学』8月号でルイセンコ遺伝学説を紹介。学説を巡る論争起こる。
・トヨタ自動車がトヨペットSA型乗用車を生産(10月)。
1948
・理科学研究所解散、株式会社科学研究所として再発足し、社長に仁科芳雄(3月1日)。
・北海道の礼文島で金環日食観測(5月9日)。
・朝永振一郎、量子電磁力学に関する「くりこみ理論」を専門誌に発表(9月)。→1965年10月21日にノーベル物理学賞を受賞。
1949
・日本工業企画JIS制定(6月1日)。
・湯川秀樹、中間子理論でノーベル物理学賞を受賞(11月3日)。受賞対象となった業績は34年に仮説として学会に発表。
・東洋レーヨン、ナイロンの本格的生産開始(東洋レーヨンは39年にナイロン66の合成に独自に成功している)。
1950
・倉敷レイヨン、ビニロン量産開始(11月11日)。
1951
・東洋レーヨンによる米デュポン社のナイロン生産技術導入に認可(4月12日)。
・NHK、テレビ実験放送で初の実況中継に後楽園球場の野球(6月3日)。
1952
・GHQ、兵器製造許可を日本政府に指令(3月8日)。→8月に兵器生産協力会発足。
・福井謙一、フロンティア電子理論を専門誌に発表(4月)。→81年10月19日にノーベル化学賞受賞。
1954
・戦後初の地下鉄丸ノ内線一部開業(1月20日)。
・学術会議第17回総会で民主・自主・公開の原子力研究3原則を声明(4月23日)。
・小平邦彦、「調和積分の研究」で第3回フィールズ賞受賞。
1955
・東京通信工業(後のソニー)初のトランジスタラジオ発売(8月7日)。
1956
・原子力委員会発足(1月1日)。
・日本原子力研究所法、核原料物質開発促進臨時措置法、原子燃料公社法のいわゆる原子力3法公布(5月4日)。
・科学技術庁発足(5月19日)。
・日本原子力研究所発足(6月15日)。
・原子燃料公社設立(8月10日)。→67年10月2日に発足の動力炉・核燃料開発事業団に統合。
・第1次南極観測隊、予備観測と越冬テストのため観測船「宗谷」で出発(11月8日)。→57年1月29日オングル島に上陸し昭和基地建設。
1957
・日本原子力研究所第1号炉JRR-1臨界、原子の火灯る(8月28日)。
・国産ロケット1号機カッパーC型の発射成功(9月20日)。
・吉田工業(YKK)、ファスナーの一貫生産開始(11月)。
・江崎玲於奈、エサキ効果を発見。73年10月23日にノーベル物理学賞受賞。
1958
・富士重工が設計製作した国産初のジェット練習機T1初飛行(1月19日)。
・原子燃料公社、人形峠でウラン鉱床を確認(5月14日)。
・日本原子力研究所、初のプルトニウム分離に成功(8月12日)。
1959
・原子燃料公社東海精錬所でウラン精錬の試験操業開始(1月27日)。
・首相の諮問機関として科学技術会議設置(2月20日)。
・古在由秀、人工衛星の軌道計算から地球の重心が理論上の位置からずれていることを発表(3月20日)。
・武藤正らが岡山県人形峠産の含ウラン鉱「人形石」を発見(6月)。
・日産、ダットサンブルーバード発売。マイカー時代の幕開け(8月1日)。
1960
・総理府に宇宙開発審議会設置(4月30日)。
・ソニー、世界初のトランジスタテレビ発売(4月30日)。
・ソニー、エサキダイオードの特許取得(11月10日)。
・遠山啓、銀林浩「水道方式による計算体系」で算数教育の現代化提唱(11月)。
1961
・広島大に原爆放射能医学研究所を設置(3月31日)。
・国立がんセンター設置(6月1日)。
・三重県の四日市で翌年にかけてぜんそく患者多発。
1962
・朝永振一郎、湯川秀樹、大仏次郎らによる第1回科学者京都会議(5月7日)。
・北陸本線で日本最良の北陸トンネル13.87キロ開通(6月10日)。
・当時世界最大のタンカー「日章丸」(13万㌧、佐世保重工)進水(7月10日)。
・戦後初の国産ターボジェット旅客機YS11初飛行(8月30日)。
1963
・日本原子力船開発事業団発足(8月17日)。
・原子力研究所、日本初の原子力発電(10月26日)。
・米国の通信衛星で日米間テレビ中線成功(11月23日)。→この時にケネディ大統領暗殺のニュースを受信。
1964
・東京モノレール浜松町-羽田空港間開業(9月17日)。
・東海道新幹線東京一新大阪間開業(10月1日)。
1965
・2代目の南極観測船「ふじ」進水(3月18日)。→「ふじ」は第7次観測隊を乗せて11月20日に出発。
・国鉄、電子計算横を活用した指定券発売の「みどりの窓口」開設(9月24日)。
・日本原子力発電、初の営業用原子力発電成功、出力5000キロワット(11月10日)。→66年8月8日から本格的発電開始、出力11万キロワット。
1968
・厚生省研究班、富山県のイタイイタイ病の主因は三井金属神岡鉱業所排出のカドミウムと発表(3月27日)。
・36階建て霞が開ビル完成(4月12日)。
・札幌医大の和田寿郎教授、日本初の心臓移植手術を実施(8月8日)。→患者は10月29日に死亡。移値手術の正当性を巡る論議のきっかけになった。
・南極観測第9次越冬隊が南極点に到達(12月19日)。
1969
・東名高速道路346.7キロ全線開通(5月26日)。
・鐘淵化学工業、石油たんばくの企業化決定(6月3日)。
・厚生省・科学技術庁にスモン調査研究協議会設置、会長に甲野礼作(9月2日)。
・宇宙開発推進本部を廃し宇宙開発事業団設立(10月1日)。
・発がん性の疑いで人工甘味料チクロの食品と医薬品への使用禁止(10月29日)。
・東海道新幹線の功績で島秀雄が日本人初のジェームズ・ワット賞受賞。
1970
・国産初の人工衛星「おおすみ」打ち上げ成功(2月11日)。
・椿忠雄新潟大学教授、スモンの原因に整腸剤キノホルムが関係と発表(9月5日)。→厚生省が整腸剤キノホルムの販売と使用中止を通達(9月7日)。→72年3月13日スモン調査研究協議会がスモンはキノホルムによる神経障害と結論。
・広中平拓、「複素多様体の特異点に関する研究」で第7回フィールズ賞受賞。
1971
・国立防災科学技術センターが神奈川県川崎市で人工がけ崩れ実験中に事故発生、15人生き埋め死亡(11月11日)。
1972
・世界一斉にうるう秒導入(7月1日)。
1974
・厚生省 合成保存料AF2を発がん性の疑いで全面禁止(8月22日)。
・日本初の原子力船「むつ」実験航行中に放射線漏れ(9月1日)。→漁船によるデモなど地元民の反対を押し切って母港の青森県大湊港を出港したのは8月26日。
・原子力船「むつ」の放射線漏れ騒ぎを契機に自民党が原子力行政の根本的見直しの方針決定(10月16日)。
1975
・原子力行政のあり方を再検討するため原子力行政懇談会設置を閣議決定(2月25日)。
・国産Nロケットによる人工衛星打ち上げ成功(9月9日)。
1976
・科学技術庁に原子力安全局設置(1月))。
・首相の諮問機関「原子力行政懇談会」が安全規制担当の原子力安全委員会の新設を三木首相に答申(7月)。
1977
・日本初の静止衛星「きく2号」打ち上げ(2月23日)。→3月5日静止軌道に。
・日本初の高速増殖実験炉「常陽」臨界に達し、原子の火灯る(4月24日)。
・動力炉・核燃料開発事業団の使用済み核燃料再処理施設運転開始を巡る日米交渉が決着(9月)。
・動力炉・核燃料開発事業団の再処理工場で単体プルトニウム抽出(11月7日)。
1978
・動力炉・核燃料開発事業団の新型転換炉原型炉「ふげん」臨界に達し、原子の火灯る(3月29日)。→7月29日送電開始。
・原子力安全委員会発足(10月4日)。
・国鉄のリニアモーターカー試験車時速337キロの世界新記録(7月5日)。
1979
・山岳トンネルで世界最長22.228キロの大清水トンネル(上越新幹線)貫通(1月25日)。
・本州四国連絡橋第1号として尾道-今治ルートの大三島橋開通(5月12日)。
・国鉄のリニアモーターカー時速514キロで自己記録更新(12月13日)。
・動力炉・核燃料開発事業団、初の純国産濃縮ウランを生産(12月26日)。
1980
・動物実験で発がん性が確認された過酸化水素の食品添加物(讃歯科、漂白剤)としての使用を厚生省が実質的に全面使用禁止(1月)。
1981
・佐渡島で環境庁による国際保護鳥トキの全島捕獲・人工増殖作戦開始、2羽を捕獲(1月11日)。→22日に最後の5羽目を捕獲。
・第4回科学者京都会議。湯川秀樹、中野好夫ら26人が参加し15年ぶりに開催。「核廃絶」を訴える(6月7日)。
・科学雑誌『ニュートン』創刊(7月1日)。→2月には『コズモ81』、10月に『ポピュラーサイエンス」など科学雑誌ブーム。
・日本初の原子力安全白書(10月20日)。
・山階鳥類研究所が6~7月に沖縄で新種の鳥を発見し、ヤンバルクイナと命名したと発表(11月13日)。
・三代目の南極観測船「しらせ」進水(12月11日)。
1982
・国鉄のリニアモーターカー、世界初の有人走行に成功(9月2日)。
1984
・富山県神岡鉱山内の観測装置で陽子崩壊の痕跡確認(1月5日)。
・利根川進、ヒト免疫細胞の一つ、T細胞の受容体の遺伝子構造解明を『Na-tur』に発表(6月28日)。→87年10月12日にノーベル医学生理学賞受賞。
1985
・日本初の人工惑星「さきがけ」打ち上げ(1月8日)。→11日に惑星軌道に乗る。
・科学技術庁無機材質研究所、直径1センチ、3.5カラットの人工ダイヤ合成(1月31日)。
・つくば科学博開催(3月17日~9月16日)。
・原子力研究所のトカマク型核融合実験装置JT-60完成(4月4日)。
・国際科学技術財団の第1回日本国際賞授賞式(4月20日)。
・日本人初のスペースシャトル搭乗科学者3人決定(8月7日)。
・シャープが立体テレビ公開(10月7日)。
・日本初の短距離離着陸機STOL「飛鳥」初飛行(10月28日)。
1986
・南硫黄島近海で海底火山(1月19日)。→3月9日、出現した新島消滅
・慶応大グループ、人工授精で女児産み分け6例成功と発表(5月31日)。→生命倫理で論議呼ぶ。
・四国でシャワーいん石、日本で77年ぶり(7月29日)。
・国産初の水素燃料エンジンH1ロケット打ち上げ成功(8月13日)。
・文部省高エネルギー物理学研究所の加速器トリスタンで電子と陽子の衝突実験成功(11月19日)。
・三原山209年ぶり大噴火、熔岩流が外輪山を越え市街地まで500㍍に迫る(11月21日)。
・東北大学金属材料研究所で零下150℃から超伝導現象を起こす新セラミックスを開発(3月3日)。
・有償治験薬丸山ワクチンの使用期間を厚生省が3年間延長(11月20日)。
1988
・総理府世論調査で85.9㌫が原子力発電に不安と回答(1月3日)。
・小笠原近海で日本付近では今世紀最後の皆既日食(3月8日)。